WHGC分科会 「医療制度を自分ごと化」グループ(2023年10月発表)
1.国民医療費は20年間で40%増加という事実
令和2年度の国民医療費は約43兆円。
この最大の要因は、もちろん高齢者人口の増加です。
これから更に高齢者人口が増えていくと、国民医療費も更に増加していくのは明らかです。
自動車産業がGDPの約1割と言われているので、すでにGDPの8%に達している国民医療費の規模は相当大きいことが分かります。
2.増大する国民医療費を自分ごと化して考える
医療費が増えていくのは止められないけれども、私たち自身が何かできることはないのか?
この疑問から、私たちのグループは検討を始めました。
高齢者が増えていくと、認知症の人も増えていき、現在は5人に1人ですが、今後は3人に1人となる社会へ進んでいくと推計されること。
認知症を発症したあとの生存期間は 6〜12年と長いため、それだけ医療費も増えると見込まれること
認知症は医療費だけではなく、介護や家族のケアなど社会的コストが大きく、2060年には約24兆円にまで増える試算があること
こうしたデータをもとに、がんや生活習慣病など様々な疾病がありますが「認知症」が、社会的なインパクトの大きいことと、「疾病の予防」が医療費を抑えるカギとなることと捉え、認知症の予防にフォーカスして、課題を掘り下げていくこととして、様々な有識者の方に、直接お話を伺っていきました。
3.認知症のリスクは減らせる
「ゼロ次予防」を提唱されている千葉大学 予防医学センターの近藤 克則教授によると、認知症のリスクが軽減される研究は多くあることを知りました。
特に、身体を動かす運動はもちろん効果がありますが、趣味を持っている人は、認知症の罹患リスクが低くなる、というのは大きな学びとなりました。
趣味を増やそう!
といっても、そんな簡単に何かが趣味になるわけではないですよね。
そこで私たちのグループでは、認知症のリスクを減らすことにつながる「趣味」について、実は私たちのふだんの活動の中に「ヒント」が隠れているのではないかと考え、アンケートを実施してみました。
4.「楽しいと感じた活動は?」アンケートの実施
アンケートの内容は次の通りです。
まず直近半年の中で「楽しい!」と感じた活動をリストアップしてもらいます。
(20個まで上げてもらいましたが、すぐに出てくる人と15個ぐらいで止まってしまう人など個人差が大きいことに驚きました)
そのリストアップした活動に対して、
主体度
頻度
趣味度
仲間度
の点から、スコアをつけてもらいます。
この内容をもとに、楽しいと感じた活動の個人マップが出来上がりました。
サンプル数は多くないため、参考値となりますが、アンケート結果から見えてきた傾向についてご紹介します。
主体度・頻度・趣味度・仲間度という尺度で見ていくと、男女別ではほとんど差が無かったのに対し、年代ごとでは一定の差が見えてきました。
やはり、ライフステージや家族構成で、楽しいと思える活動に影響が出てくるようです。
次に、楽しいと感じる活動を上げた「個数」に着目してみました。
各尺度との相関関係を調べたところ、楽しいと感じる活動の個数が多いほど、主体度、頻度、趣味度、刺激度、仲間度、いずれも高くなる相関関係にあることが分かりました。
こうして見ていくと、私たち一人ひとりが、自分の中で「楽しい!」と感じる感度が重要ではないかと考えられます。
5.「それ(実は)趣味じゃない?!」に気付くきっかけ
このアンケートにより、年代や性別の平均と自分を比較してみることもありますが、実施してみて最も発見だったのが、マップ化した自分の活動を自分自身で見返してみることの楽しさでした。
たとえば、主体度と頻度を軸に楽しいと感じた活動をマップ化してみます。
この中で「工作をする」とは子供と一緒にプラモデルを作ることが楽しいと感じてリストアップしていましたが、他の活動と比べて主体度が低く、頻度もあまり多くないところに位置していました。
ただ、プラモデル作りはもっと楽しみたいことに気づき、さらにはDIYまで広げていくと、もっと楽しめそう、といったことに気づく。
楽しいと思った活動を、趣味のように進化させていくヒントを、このマップから探していくこと自体も楽しい、と感じるケースが多かったです。
そこで、楽しいと感じた活動を振り返ることにより、楽しいを趣味へと進化させるように人々の行動を促すことができると考え、これを「ウキウキシート」と命名してみました。
「ウキウキシート」はコチラから(EXCEL形式)
アンケート回答者の意見を聞いたところ、同様の声が多くあがってきました。
いくつかの声をご紹介します。
これは立派なコミュニケーションツールだ。
楽しかったことを振り返るだけでも楽しい。
楽しいと感じることを深めることか・・・と自分なりの気づきを得た。
メンタルケアや会議前のアイスブレイクにも使えそうだ。
国民医療費の増大に、私たちができること。
認知症の予防につながるよう、趣味を増やすこと。
趣味となる種は、実はふだんの行動の中にヒントがあること。
ウキウキシートで、自分の活動を振り返ること自体が楽しいことに加え、仲間とのコミュニケーションシートとしても活用できること。
この考え方を広げ、こうしたことを実践する人を増やしてていくことで、認知症の予防につながり、医療費の削減にもつながっていく、と考えます。
6. WHGC分科会「医療制度」グループ(提言者)
この提言は、World Healthcare Game Changers Forum のプログラムの一つ、WHGC分科会メンバーによって作成されたものです。(2023年10月発表)
ぜひ皆さまご自身でも、実践いただき、気づいた点、感想などを共有ください。
【お問合せは info@whgcform.org】まで
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