【総括講演】
原 丈人
アライアンス・フォーラム財団 会長
WHGC設立発起人
本日はWHGCにお越しいただき、ありがとうございました。
介護医療のお話を木村さん、地球環境のお話を武岡さん、まちづくりのお話を中村さん、地域経済のお話を野口さん、大変お忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。WHGC設立発起人として、どういう意図があるのかを知っていくことを主眼に、ご挨拶をさせていただく。
俯瞰的に物事を捉える力を磨く
俯瞰的に物事を捉えられる人を増やす、ということが、WHGCの1つの目的だ。地球を俯瞰的に見て、世界で何が起きているのか正しい情報を見抜く力をつけることが重要である。
VCは新しいスタートアップに資金を出さないし、CVCもうまく行きにくい。そこで学者が会社を作る前に資金を出す仕組みを、私は香港を選んで作っているところだ。会社を作る前の段階でお金を出すのはなかなか難しいが、我々が考案したものを、JPモルガンと合同で行う予定だ。
非常に大がかりな研究が香港では行われている。香港は中国化されているという間違った情報が出ているが、欧米の一流大学は香港に研究所を作っている。日本の大学で香港に研究所を構えているのは、香港大学に拠点をもつ東北大学1校だけだ。大野総長は、2019年から起きているデモなどの騒動等々に惑わされなかった。
2013年に私はイスラエルの拠点を閉じて、香港に拠点を設けた。米国も日本も株主資本主義に染まっており、長期間の研究開発へ資金が出ない。一方、香港にはディープテックへの研究開発投資が可能な環境があるのだ。そこでアンテナをはり、サイエンス分野の博士号を持つ私より若いメンバーを各大学に張りつけている。科学者には事業を立ち上げるときは、社会全体を豊かにする使命をもつことを徹底的に教え込んだ。私は外人だが、今では5つの大学に対する香港政府の助成金審査を、全て我々が行う仕組みが出来ている。
スタンフォード大学の元学長で、現在はGoogleの親会社Alphabet Inc. のチェアマンであるジョン・ヘネシーは、公益資本主義を学ぶためによく私に会いに来る。世界中から名誉博士号を授与する話が来るが、彼がわざわざ受け取りに行ったのは香港大学だけであった。
アジアの大学トップ20に、香港にある5つの大学は全てランクインしている。トップの学術レベルを持つ大学との提携を求めて、世界中の研究機関が香港に来るわけだ。明治時代に、志賀 潔と北里柴三郎がドイツに勉強に行ったようなものだ。
米国や中国の情報を私以上に持っている人はいないために、私に会いに来る人が多いのだが、日本政府の人は、外国のファンドのために働いているのかと見紛う考え方の人が多い。
国益ではなく国民益を考える
俯瞰的に物事を見て、現場の感覚を身につけることによって、会社の経営を良くしていく。具体的には、生産性を上げてもっと儲ける。せっかく儲けても、株主ばかりに取られる今の仕組みではうまくいかない。WHGCにお集まりの11社の中核となる方々には、理念として覚えていただき、それぞれの立場で実現していただければと考える。
国益だけを話していたら偽物だ。一人ひとりの国民が健康で豊かになることを目指し、国民益を考えることが政治家の役目ではないか。
昨年、日本の上場会社3800社のうち、1009社が自社株買いをやっている。総額9兆6千億円という莫大なお金だ。トップ15社は1.7兆円を使っている。15社の総従業員は約20万人なので、自社株買いではなく社員の給料にこれを充てた場合には、1人当たり830万円の賃金が増える計算だ。
自社株買いではなく、賃金、将来の研究開発、未来への投資に使うほうがはるかに優れているにもかかわらず、昨年、東証はPBR1倍以下の会社は、自社株買いを実施して株価を上げることを推奨した。金融庁や財務省の閣僚等には、問題のある政策であると指摘している。
好循環を作ることが経営者の仕事
米国のフォード・モーターは、給料を5割から倍に上げた時代がある。
そのために配当金を減らしたら、ヘンリー・フォードを被告人とする裁判を直ちにおこされた。ところが自社製品を購入できるようになった社員たちは、誇りを持って働くようになったために、業績も株価も上がり、結果として株主は儲かったので裁判はとりやめになった。
このような好循環を作ることが、日本政府がやるべきことだ。外国のファンドに資金を垂れ流すとは、とんでもないことである。
日本企業の株主総会における株主提案は、ほとんどがアクティビストからの提案だ。
「自社株買いを増やせ」「配当を増やせ」「経営陣と株主の利害を一致させるために株式報酬の金額を増やせ」というものである。こういった株主提案を受け入れるのが良い会社というのが、金融庁の方針なのだ。
そこで、私は金融庁が推進する株主提案を、逆手に取ることを考えている。実現はこれからだが、国連経済社会理事会のもとに会社を作り、これはと思われる日本の上場会社の株式を買って、株主提案をしていく。
その提案とは、自社株買いをするくらいなら社員の給料を上げてほしい、自社株買いをやってはいけないという条項を定款に盛り込んでほしいというものだ。法令定款遵守主義に則り、定款に盛り込まれたものは、日本では会社法と同等に扱われる。これにより、アクティビストが来てもびくともしない会社ができるのだ。
俯瞰的かつ自分で考えられる社員がいる会社は強い
WHGCの目的は、流行に捉われず、俯瞰的に物事を捉え、かつ、現場感覚の重要性を肌で感じている社員を、会社の中でたくさん増やしていくことだ。そうした社員は、メディアの情報に流されることなく、自分の頭で考えられる。
その結果、付加価値を生み出し、生産性が高まり、会社の業績があがり、社員が豊かになり、結果として、株主も中長期で大きな利益を得られる。
社員とその家族が守られるような社会を作ること。
それをまず日本に広げて実践し、世界へと広げる流れが生まれることが望ましい。
少子高齢化に伴う財政の懸念から、日本の政府が、変な方向に行くのを止めようとすることも大事だ。
俯瞰的に見るという点では、報道されないが、我が国で大変なことになっていることを共有したい。次に世界で流行る疫病でパンデミックと定義されたものについては、WHO指定のワクチンを条約加盟国の国民は打つ義務があるという条約である。
米国民主党等々とWHOが検討中のこのパンデミック条約に対して、日本政府は締結に向けてまっしぐらに進んでいる。
日本は米国と異なり、国内法と国際法が矛盾する場合には国際法を優先すると日本国憲法で定められている。したがって、国民はその注射を打たないでおくという選択肢がなくなる。2、3年後に用意されるのは、従わない人は逮捕するという案だろう。
日本の政府は、世界の潮流として、この流れを進めようとしているが、この件は、個人の選択の自由を阻害することを、日本政府が国際的に認めるような条約となってしまう。
厚労省を始めとした関係機関に、こうした条約を批准することの愚かさを、説得しようと考えている。
サイエンスの真理に則り、自由な討論の場が必要
地球の温暖化の原因はCO2という話をあちこちで聞く。
ただし、これも怪しいという意見が出てきている。カナダの理科系大学のトップであるウォータールー大学の学長、理学部長、工学部長等々もこの分野には疑問があるということで、昨年議論した。外国の権威ある人に指摘されると、日本では効果があると考え、日本の閣僚にも、この2月にCO2に関する疑問点をぶつけた。そうすると、全てを再生エネルギーに変えていく方針が正しいかどうか疑問に思われたようだ。
非常に重要なことは、温暖化、コロナワクチンの危険性、香港に関する情報など、違うことを言うと迫害視される状況になっていることだ。サイエンスの真理からいうと、マジョリティの考え方に立ち向かっていく自由な討論の場が必要だが、米国でも中国でも失われていく傾向がある。
例えば中国において、欧米並みの言論の自由を実現するとどうなるか。おそらく毎年2万ヵ所以上の反政府運動が起きてしまうだろう。戦前にあった軍閥の時代に戻ることになる。お金の発行が軍閥ごとに異なっていたために、軍閥が潰れるとその貨幣は無価値になる。家畜も死ぬ可能性があるし、小競り合いがあると、国民の財産が盗まれたり殺されたりする。しかも捕まえる警察がいない。
とはいえ、言論の自由が少々なくても、少なくとも共産党政権のもとでは、人々は平和に暮らしている。1990年比で、日本の実質賃金が1割減っている間に、中国では実質賃金が30倍に増えているからだ。そのため中国政府に対する不満など、もっていないのではないか。西洋基準における言論の自由、人権、LGBTなど、そのまま受け入れることに対しては、きちんと考えた方が良い。
最後に本日のWHGCフォーラムに際して、お話をいただいた4人の皆さんに、改めて御礼を申し上げる。本日はありがとうございました。
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